息子の入学式へ

新入生の数が100名ちょっとだから、
大学構内にある古い講堂にて入学式が挙行された。
小さく、ささやかではあったが、とても荘厳な式典であった。


ひとりひとりの名前が、ゆっくりと読み上げられ、
新入生たちは「ハイ」と大きな声で応えながら起立した。


全員が起立した後、彼らに向けて静かに語りかける、学長の挨拶が素晴らしかった。


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「医者の仕事は、病気を診る事ではなく、病人を診る事です。
病に苦しむ人の心の痛みを診る事です。


そのような医療人を育てる事が本学の使命であります。


本学は、あなたたちを宝として迎え入れます。
なぜなら、あなたたちはいずれ、私たちと共に歩む同志となるからです。」


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僕は、息子に、アンパンマンのような医者になってほしいと願っているのだけれど、
僕だけじゃないな、
この式に臨んだ父兄の誰もが、それぞれの子供にね、同じ事を願っているんだろうなと並んだ肩越しに感じた。


この100名ちょっとの若者たちは、
弱い人や悲しい人や、苦しむ人たちを純粋に助けたくて救いたくて、
そのために医師になりたくて必死に勉強をして、この大学に入ったんだもんな。


10年後だよ、10年後、
この若者たち全員が、アンパンマンのような優しい医者になっていますように・・・。


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病気を診るのではなく、病人を診る。
そんな建学の精神を持った大学で息子たちは学ぶ。


医師という職人の世界への弟子入り。
丁稚奉公なりけり。
学びなさいよ盗みなさいよ、技を心を。