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母方の祖父にとっての初孫は僕であった。
その祖父は58歳で他界したのだけれど、はっきりと僕は覚えている。
穏やかで優しい、お人好しなお爺ちゃんだった・・・。
銭湯よ、銭湯・・・。
幼児だった僕と祖父で、毎日銭湯へと出掛けていた。
昭和40年代、まだ北区滝野川界隈には銭湯がたくさんあったのよ。
あれは僕が3歳、祖父は55歳、
銭湯で湯船に並んで浸かっていたら、目の前にウンチがプカプカ浮かんできた。
まったくな~、汚いな~って思っていたところ、
祖父はそのウンチを両手ですくい取り、湯船の外へサッと流し出し、
「 孫がスミマセン! 」と、周囲の人に謝ったのである。
う~む、僕のウンチではないのであったが、
僕は、そんな祖父を今、ちょびっと誇らしく思う・・・。
来春、生まれて来る孫に、
僕もそんな思い出を作ってやりたいものだ・・・。
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娘がソファーの上で熟睡している。
その寝顔は27年前の、娘自身が未だ赤ちゃんだった時と同じ顔だ。
人生とは、人間とは、面白いものだ・・・。
もしかすると娘のお腹の中にいるのは、
母方の祖父の生まれ変わりの魂かもしれない。
誰にも言わないけれど、そんな事を考える僕だ・・・。
親が子となり 子が親となり、代々恩の・・・ってヤツだよ。
この孫が生まれ、3歳ぐらいになり、
一緒に銭湯へ行き、湯船に浸かって、
目の前にウンチがプカプカ浮かんでいたら、
僕もそれを両手ですくおう・・・。